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 ところが対岸に渡ると、風が穏やかです。山に囲まれた小さな集落。気温は22度くらいでしょうか。そしてノボリに導かれてゆくと、畑の真ん中に蜜柑色の建物。これが町営の草塩温泉です。
 建物はコンクリート造の上に、屋根は湯気が抜けるように角材に波型プレートを張っただけの簡易構造。こんな屋根じゃ積雪で壊れないかしら?
 そんな立ち寄り温泉ですが、特徴が二つあって、ひとつはその内容。泉質は含重曹弱食塩泉ですが、近くの雨畑(習字の硯石の産地)という谷で産出するブラックシリカを使用しているそうです。ブラックシリカって岩盤浴の床材ですね。ブラックシリカの遠赤外線の効果で、温浴感が強いという。
 浴槽の丸石が湯口になっているのですが、よく見ると丸石は貼り合わせた跡があり、内部にブラックシリカが仕込まれているらしい。浴槽のタイルが黒いので画像では分かり辛いのですが、お湯は透明です。ちなみにここは冷泉。41度に加熱してあり、さらりとした肌あたり。風呂あがりは少ししっとり感があり、温浴感もマイルドです。残念ながらブラックシリカの効能なのかは分からず、ふつうの温まる温泉でした。
 草塩温泉のもうひとつの特徴が、併設するお食事処で、何とお寿司屋です。こんな山あいでなぜお寿司屋?と驚きますが、日本橋人形町で35年間お寿司屋を営んだご主人が、草塩の水の美味しさと住民の人情に惚れ込んで移住してきたのだそうです。メニュウを覗くと、蕎麦や丼ものの他に、確かに「にぎり鮨(上)¥1,900-」とあります。ロビーにはご主人が高倉健やゴルバチョフと並んだお写真や、Harley-Davidsonのフルサイズに跨ったお写真も飾ってあります。「日本一、人口が少ない町」をキャッチフレーズにする山梨県早川町の温泉で、江戸前で腕をふるったご主人が鮨を握る…、これは間違いなく特徴です。
 草塩温泉を発つと、帰路につきました。
 帰りの東名も混んでいて、おまけに事故渋滞に遭遇。しかし樹齢600年の桜と、お寿司屋のご主人の気概を思うと、へこたれてはいられない。気合いで渋滞走行をしのいで、帰宅したのは17:40、総走行は382kmでした。
 後日、家族が調理してくれた富沢のタケノコ(タケノコごはんと、タケノコと高野豆腐との煮物)は旨味が鮮やかでエグ味がなく、さすがに名産品。春のごちそう、でありました。
「町営・草塩温泉」 
入浴料¥550-
山梨県南巨摩郡
早川町草塩321-1
0556-45-2260