「五十沢温泉ゆもとかん」は一軒宿。敷地はだだっ広く、駐車場もグラウンドのよう。そこに雪国らしいがっしりとした建物。
外観はまるで学校や寄宿舎みたい。館内も温泉旅館にしてはシンプルで、好感がもてます。若おかみが笑顔で迎えてくれました。ここは一部を除いて、内風呂も露天風呂もすべて混浴とのこと。そうだ、思い出した!ここは混浴の大露天風呂で有名なところだ。「入浴客はまだお客様ひとりなので、ゆっくり温泉を独り占めしてください」 誰もいない?なんという幸運!
脱衣所には「女性から誤解されないように、視線にご注意をお願いします」と注意書きがあります。(苦笑)
さて浴槽は「大きな混浴の内風呂」と「内風呂の外につながった、大きな混浴の露天風呂」と「小ぶりの男性専用の露天風呂」の三つ。それぞれ別の源泉井戸をもち、源泉がかけ流されています。内風呂は岩風呂にしつらえてあって、中央の巨石がひときわ見事です。浴槽の底は、鉄平石と青石とが交互に貼られていて、楽しんで造られたような温かみが感じられます。まず身体を清めるのですが…内風呂からオーバーフローしたお湯が洗い場に流れて、洗面器がいっしょに流れていってしまう。なんという湯量!
源泉は49度でかけ流しですが、これだけ大きい岩風呂だから適温に。水深が深い。泉質はアルカリ性単純泉で、色は透明ですがよく見るとわずかに黄色味がかっています。そして、ほんのり甘い匂い。
中央の巨石に近づくと、巨石にも立派な役割があって、これで女性側の洗い場が覗けないようにしていることがわかります。
つぎに内風呂の敷居をまたいで露天風呂に移ります。露天風呂も大きくて、塀と大岩で囲まれています。中央に井戸のような穴があって、そこにオーバーフローしたお湯がザーザーと落ちてゆく構造。そしてこちらも水深が深い。僕一人で入浴しているのが、もったいないくらいの湧出量です。
露天風呂でしばし瞑想にふける。お湯は、心が和む柔らかい浴感というか、効能だけが優しく入ってくる快さです。以前は、効能が身体に入ってくるパンチのある温泉が好きでしたが、このごろはこういう長湯ができるお湯も好きになりました。
風呂あがりは身体が軽い。
五十沢温泉は素晴らしいお湯で、文句なくお薦めします。
さて、ゆもとかんは自転車屋だった初代が、融雪のための井戸を掘ったら、温泉を掘り当てたというものです。若おかみに巨石のことを伺うと、創業した後に、ダム工事(補足;たぶん越後三山にある三国川ダムのことだと思います)の作業員の宿泊を一手に引き受けたときに、現場で掘り出した巨石を初代が譲り受けて、皆で協力して岩風呂に置いたものだそうです。温かみを感じるエピソード。
風呂あがりに敷地内を散策すると、池がありました。山古志村が近いので、泳いでいるのも錦鯉。そして池の縁取りも露天風呂と同じ岩です。初代は、ダム工事の皆さんをも巻き込んでしまう、魅力的なお人柄だったんでしょうね。
この穏やかな余韻を大事にしたくて、このまま帰路につくことにします。お昼ごはんは、関越道・八ヶ岳PA(上り)名物の「もつ煮定食」ですませればいいや。
「五十沢温泉ゆもとかん」
入浴料¥700-
新潟県南魚沼市宮17-4