葛飾北斎の「富嶽三十六景」に描かれた、鰍沢である。場所は富士川に釜無川が合流して、波がたったところという。まさにこの対岸だ。現在の、長閑な鰍沢口とはぜんぜん違う。
 もう一方のたもとに、おもしろいものを見つける。土手に「富士橋」と描いてある。この鉄橋は歩道部分を後付けした際に、通行のために橋梁の銘板を取っちゃっているらしい。そういう経緯ならば、名前の表示場所に困って、やむなく地面に描いたのではないか?でもこの向きだと、橋を渡り終えたときに読める向きなので、それでいいのかしら?それとも昔の工事でペンキが余っただけ?謎は深まるばかり。
 さきほどのおっちゃんに質問すると、「さぁ…(笑) あなた、もしかして古い遺構を調べて回っているお方ですか?」 そう聞かれると、こちらも好奇心だけとも言えず、困った。
 笑顔でおっちゃんとお別れすると、富士橋を渡る。交通の要衝にしては不自然なくらいに幅が狭い。でも秘境に向かうときの高揚感が味わえる。架け替え工事はまだ1年くらいかかるそうだから、もう一回は渡れるな。
 対岸で国道52号線、富士川街道を南に走る。しばらくすると「十谷(じゅっこく)入口」という交差点が現れる。ここを曲がる。
 R407、南アルプスで行き止まりになるピストンルートのはじまり。目的地は、道が険しくなる前にあるはずの立ち寄り温泉。
 R407は緑深いワインディングロード。新緑の放つ匂いがヘルメットのなかに届いて、わくわくする。
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