群馬県側に坂を下ると、鹿沢温泉・紅葉館が現れる。画像は坂の下から見上げたところ。
紅葉館は歴史のある、そしてウンチクにも事欠かない秘湯。「山の歌『雪山賛歌』発祥の宿」「大正時代の大火をまぬがれて源泉地で一軒だけ残った」「かつて『天然温泉表示制度』の審査でオール5取得」「かけ流しのお湯が1時間で入れ替わるように、代々浴槽の大きさを変えない」等々。
僕がいままで鹿沢温泉に来なかった理由は、駐車に難儀するのが明らかであることだ。単車は、スタンドを立てて車体を左に傾けて安定させるVehicleなので、下り坂だと苦労する。駐車場が砂利であると、なおさら不安定だ。
そこで鹿沢温泉の前を通過して、Uターンして戻ってきて、駐車場のキワに駐めた。Uターンできる場所まで、1kmも坂をくだったけれど。
でもこのロスタイムが奏功して、温泉は前のお客さんが帰った直後で、貸し切り状態。湯屋は、階段を降りた一段低いところ。浴室はセメントと煤けた木で囲まれた薄暗い空間で、神秘的な雰囲気。4〜5人でいっぱいという木張りの浴槽に、源泉が流し込まれて、浴槽の縁から床にオーバーフローしている。驚いたのは、壁から源泉が打たせ湯として滝のように流れ落ちている。それも“身体を清めてください”と言わんばかりにカランのわきに。打たせ湯で身体を清めるのは初めての経験。
浴槽は水深が深くて気持ちいい。お湯は白濁した昆布茶を思わせる色で、匂いは鉄っぽい。泉質はマグネシウムナトリウム炭酸水素塩泉で、源泉は48度。浴槽でも熱めで44度くらい? 肌あたり柔らかく、効能がじんわりと入ってくる感じ。薄暗い空間で、打たせ湯のたてる水音を聞きながら、瞑想にふける。風呂あがりは優しい温浴感。さらさらになった肌をさすりながら、原生林を見上げる。(右)
てっぺんの白い幹はブナだ。大好きなブナ林を、今年も見られることができたわけだ。
鹿沢温泉は名湯です。ただ、あれだけ小さな空間だから、もし他人といっしょだったら気を遣うだろうなぁ。この点は過去に訪れた「五色の湯(松川)」や「かつらの湯(白骨)」でも感じたところだが。
「鹿沢温泉・紅葉館」 入浴料¥500-
0279-98-0421
群馬県吾妻郡嬬恋村田代681